空手を習うと仕事もうまくいく理由

『前後裁断』という言葉があります。
これは、
「前後裁断と申す事の候。前の心をすてず、又今の心を跡へ残すが悪敷候なり。前と今との間をば、きってのけよと云う心なり。是を前後の際を切りて放せという義なり。心をとどめぬ義なり」
沢庵和尚から柳生宗矩への手紙の一文です。
現代文で訳すと
「過去の心を捨てないことや、今の心を未来に残すことは悪いことです。以前のことを引きずらぬよう、今の思いが未来に尾を引かぬよう、いまこの瞬間以外を切って捨ててしまいなさい。心をとどめてはいけないのです」
といった意味になります。

この前後裁断の教えを私は空手道を通じて学びました。
かつては選手として様々な大会に出場しましたが、今でも忘れられない試合があります。
それはまだ、私が試合経験も浅い頃でした。

全国大会の予選。
かなりの練習を積んで本番に挑みました。
「人の何倍も稽古したんだ!負けるわけにはいかない!」
気合いはピークに達していました。
型競技は、技の強さ、速さ、緩急、表現力などを5人の審判が評価します。
総合得点が高い方が勝ち。
本番のコート、いよいよ試合の始まりです。
序盤、順調な滑り出しでした。
練習通りに技を繰り出していきます。
そして、いよいよ中盤のヤマ場にさしかかった時…
思わず足下が滑り、態勢が崩れました。
「しまった!」
私は焦りました。
「このままでは減点されてしまう!」
焦りは更なる焦りへと繋がり、結局最後まで稽古通りの動きができないまま演武を終えました。
案の定、1回戦負けです。
悔しさと情けなさで、控え室で泣きました。
しかしその後、私は自分の決定的な敗因に気がついたのです。
その敗因とは、私は試合をする前から既に自分に負けていた、ということでした。
なぜならば、負けるわけにはいかない!との気負いが、平常心を完全に奪っていたからです。
だから態勢が崩れた瞬間、「負けてしまったらどうしょう!」といった負けることへの不安が頭をよぎってしまった…
つまり私は、悪い試合結果という未来を、よりによって試合中に想像してしまったのです。
ミスの連鎖は、起こるべきして起こったもの。
これぞ、典型的な自滅です。
私は、一からメンタルを徹底的に鍛え直すことにしました。
様々な書物からメンタル強化についての知識を吸収し、稽古メニューにイメージトレーニングを取り入れました。
そのおかげで試合経験を重ねるごとに、ミスの回数は減っていき、ミスをしたとしても気持ちを引きずることなくリカバリーできるようになったのです。
そして、気がついたら、こう自分に言い聞かせるようになっていました。
「ミスをしても気持ちを切り換えて、今この瞬間に集中するんだ」と。

気持ちを残さない、ぐらつかない精神は、日々の仕事にも活用できます。
忙しい時に限って様々なトラブルや、横やりが入って仕事が中断しがちです。
でも事象に心をとらわれず、今何をするべきか考える。
そして優先順位を決めたら、目の前の仕事に集中し、一つ一つ丁寧にこなしていく。

 

 

 

 

過去を悔やんでも現実が変わるわけではありません。
また、何も起こってないのに未来を心配することも無意味です。
人間がコントロールできるのは、今この瞬間のみしかありません。
過去を引きずらず、未来に不安を持たず、そして過度な期待もしない。
毎瞬に集中する。
この前後裁断の心構えが、過去と未来を意味のあるものに変えてくれるのです。

空手の型は、今に集中し、瞬間的に気持ちを切り換え、次の技を出し続けます。
このように型を稽古する自体が、前後裁断の心を養うトレーニングであり、仕事や私生活の充実にも繋がるわけです。

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